金正恩氏が「処刑した叔父」を懐かしむ声が聞こえてきた

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張成沢(チャン・ソンテク)。金正日総書記の妹、金敬姫(キム・ギョンヒ)氏の夫で、かつては北朝鮮で絶大な権力を誇っていた人物だ。ところが2013年12月、甥である金正恩党委員長により処刑されてしまった。

粛清に際しては、愛人の元トップ女優をはじめ、一説に1万人もの人々が連座させられた。

(参考記事:【写真】女優 キム・ヘギョン――その非業の生涯

それから6年。平壌の高位幹部の間ではこんな話が漏れ聞こえてくるという。

「張成沢がいた頃は、カネをバラマキながら事業を進める者が多かったのに」
「張成沢が経済政策を主導し続けていたらどうなっていただろう」

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かつては粛清に巻き込まれることを恐れ、その名前を口に出すことすらはばかられた張成沢氏のことを、親しい間柄での会話に限られるとはいえ、懐かしむ声が上がっていると、北朝鮮の高位幹部がデイリーNKの取材に語った。

(参考記事:「幹部が遊びながら殺した女性を焼いた」北朝鮮権力層の猟奇的な実態

張成沢氏が進めていた経済特区、外資の誘致、中朝貿易の拡大などが続けられていたら、経済状況は今よりずっとマシになっていただろう、という趣旨である。

張成沢氏が進めていた経済特区には、平安北道(ピョンアンブクト)の新義州(シニジュ)市郊外にある黄金坪(ファングムピョン)や威化島(ウィファド)がある。中国に食い込んだ中洲という地の利を生かし、開発が進められようとしていたが、その矢先に張成沢氏が処刑され、計画が頓挫してしまっている。

(参考記事:【写真レポート】田植え戦闘真っ盛りの北朝鮮経済特区「黄金坪」

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別の平壌の情報筋は、高位幹部のみならず商人の間でも張成沢氏を懐かしむ声が上がっていると伝えた。

「張成沢の存在は大きかった」
「当時はカネのある人がドル札を気前よくばらまいていたが、今では商売上がったりだ」

国際社会の経済制裁により、主力輸出品だった鉱物資源や海産物の輸出ができなくなったことで、北朝鮮に流入する外貨が減っていると伝えられているが、国全体のカネのめぐりが悪くなり、深刻な不況として現れている。かつては賑わっていた市場も、商人の数が激減、食べ物などの日常品以外は売れないという。

(参考記事:北朝鮮の市場に異変「商人の数が激減している」

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そんな中で上がる張成沢氏を懐かしむ声。一般庶民は、彼の具体的な経済政策については知らなくとも、市場経済の進展については肯定的な役割を果たしたと認識しているようだ。

「一般庶民は経済がなぜよくないのが詳しいことはわかっていないが、それなりの人なら外貨が減ったことが(経済難の)最も大きい理由だと見ている。そのため、張成沢に繋がっていた人々が外国からカネを引っ張ってきて、市場にばらまいたおかげで当時は景気がよかったと考えている」(情報筋)

当局は、現在の経済的苦境が国際社会の制裁によるものだと宣伝している。それは決して間違っていないが、それのみならず外資の誘致や経済特区に対する消極的態度が経済をより悪化させていると見方をしているということだ。

韓国のNGO・脱北者同志会の徐宰平(ソ・ジェピョン)事務局長はデイリーNKの取材に対し「北朝鮮で商売がうまくいっていないという話があちこちから聞こえるのは事実」とし、「ただし、張成沢氏がどんな役割を果たしていたのか知っているのは一部の高位幹部に限られていることを考えると、このような話は権力を持った党幹部または資本を持ったトンジュ(金主、新興富裕層)など上層部から出た話だろう」と分析した。