北朝鮮の対韓国宣伝サイトである「ウリミンジョクキリ(わが民族同士)」は20日、「12人のわが女性たちはどこに」と題した記事を掲載。韓国に亡命した北朝鮮レストラン従業員らの送還を要求するとともに、文在寅政権の対応を非難した。
この事件は2016年4月、中国の北朝鮮レストラン「柳京食堂」の支配人と女性従業員ら計12人が集団で脱走、韓国に亡命した出来事で、北朝鮮は当初から「集団拉致された」と主張。また韓国国内においても、朴槿恵前政権下において国家情報院が介入した「企画脱北」ではないかとの疑惑が持ち上がっていた。
そして今月9日、韓国の政府機関である国家人権委員会は、この事件に関する調査結果を明らかにしている。それによると、脱北の過程で韓国政府の違法・不当な介入があったとする主張については、「客観的な証拠を確認できない」とする一方、一部の従業員が支配人の懐柔と脅迫によって入国を決めた蓋然(がいぜん)性を排除できないとした。
また、外国の法律家でつくる真相調査団は4日に発表した訪朝調査結果の中間報告書で「12人の女性従業員は欺瞞(ぎまん)により韓国に強制移送された」とし、この事件は「拉致・人権侵害」であると結論付けている。
事態がこうなった以上、北朝鮮が黙っているわけはない。前述の記事は「朴槿恵保守逆賊一味が敢行した前代未聞の反人権犯罪」であると指摘する一方、文在寅政権にも非難の矛先を向けている。
人気記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面「現当局の執権後も変わった点はなく、ただ責任回避にのみ汲々している」としながら、「現南朝鮮当局は、我々の女性たちを強制抑留して戻さずに置きながら、『離散家族の痛み』とやらを論じてはならない」として、従業員らの送還を、文在寅大統領が重視する朝鮮戦争などで生き別れになった南北離散家族の再会事業の前提条件とする姿勢を見せている。
他の北朝鮮メディアも、これと同様の記事を掲載しているが、こんなものはまだまだ序の口である。しばらくすれば、北朝鮮当局者が公式に、従業員らの送還を韓国政府に要求するかもしれない。また、国連人権委員会などで、北朝鮮にいる従業員らの家族が、娘の送還を訴えることもあり得る。
金正恩党委員長はまたひとつ、文在寅政権を窮地に追いやる「ネタ」を握ったと言えるのだ。
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