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2014年10月に完成するも、今に至るまで放置され続けている新鴨緑江大橋(正式名称は中朝鴨緑江界河公路大橋)について、北朝鮮の金正恩党委員長が今年11月までに工事を再開させるよう命じたと、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

仕事で北朝鮮の新義州(シニジュ)を訪れたという中国丹東の貿易会社の幹部はRFAに対し、「金正恩氏が平安北道(ピョンアンブクト)に橋の開通のための仕上げ工事を蹉跌なく行えという指示を直接下したという話を、道党(朝鮮労働党平安北道委員会)の幹部から聞いた」と語った。

金正恩氏は、橋の南詰(北朝鮮側)から新義州市内へとつながる道路と、税関の建物の工事を「道党が責任をもって行え」との指示を下したが、これは予算も自己調達せよ、つまり完全な丸投げを指しており、幹部らは非常に困惑しているという。

現在、鴨緑江の川岸から800メートルの地点まで道路が完成している。そこから国道1号線までは4キロで、ちょうど新市街地の南新義州と楽元機械工場の間につながる。現在の新義州税関まで直接つなげても10キロほどだ。

通産省の資料によると、日本では国道を1キロを建設するのに9億円から24億円の予算がかかる。これは用地買収、耐震設備などを含めたもので、人件費や用地買収費があまりかからない北朝鮮ではこれより遥かに少ないだろう。金正恩氏が進めている三池淵や元山葛麻(ウォンサン・カルマ)海岸観光地区の工事より安くつくはずだが、その資金を確保できる見込みがないということだ。

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そのため、この貿易会社の幹部は工事が11月に始まったとしても、中央ではなく地方組織に工事が丸投げされたことで、「近日中の開通は難しくなった」と見ている。

そもそもこの橋はどのようなものなのか。

現在、北朝鮮と中国を結ぶ大動脈としての役割を果たしているのは鴨緑江大橋だ。日本の植民地支配下にあった朝鮮の新義州と、日本の傀儡国家であった満州国の安東(現丹東)を結ぶ2本目の橋として、1943年にかけられた。

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朝鮮戦争中に米軍の爆撃で破壊されたが、その後修復し今に至るまで使い続けられている。鉄道と道路の併用橋で、対面通行を強いられる上に、老朽化が進み、補修工事で度々通行止めになっている。

(参考記事:北朝鮮と中国を結ぶ橋、補修工事で9日から一時閉鎖

問題解決のために中国は、建設費を全額負担し、鴨緑江大橋から下流10キロのところに新鴨緑江大橋を2014年10月に完成させた。ところが、北朝鮮は自国側の連絡道、税関施設なども中国に建設するよう要求したため、開通ができずにいる。それがようやく動き始めたということだ。

(関連記事:北朝鮮の「無理難題」で宙に浮く中朝経済プロジェクト

丹東の別の情報筋は、未確認情報だと前置きしつつ、中国が道路と税関の建物の工事に予算支援を行うとの報道があったと伝えた。それなのに金正恩氏が工事を平安北道の道党に丸投げした理由が気になると述べた。

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平安北道の道党が工事を請け負うことになれば、進まないことは火を見るより明らかだ。橋の開通を指折り数えて待っている中国から「工事費支援」の話が出たのも、そういう期待を反映したものだと分析した。

この「報道」とは、おそらく朝日新聞が今年7月29日付で、習近平国家主席が訪朝した際に、橋の開通に向けた予算の負担などを約束したと報じたことを指すものと考えられる。同紙はこの提案が、北朝鮮の高官や建設に関わる軍部でも共有されたと報じている。ただし、中国メディアはこの件を報じていない。

橋の開通の話に、丹東の不動産業者は期待を抱きつつも半信半疑だという。

「新鴨緑江大橋がまもなく開通するという話を信じて丹東新区に投資して、5年を無駄にした投資家たちは、金正恩氏が橋の工事を進めよと指示を直接下したという話すら信じようとしない」(情報筋)

新鴨緑江大橋の西詰(中国側)には、新市街地「丹東新区」が造成された。丹東市は市政府庁舎を旧市街から移転させるなど大変な力の入れようだったが、新鴨緑江大橋の開通が遅れる中、旧市街地と丹東市政府を結ぶ幹線道路沿いなど交通の便の良いエリアを除いては、半ばゴーストタウンと化している。

また、丹東から20キロ圏内に住む住民に限って北朝鮮から買い付けた商品を販売できるという「丹東国門湾互市貿易区」が2015年10月が新区内に開設されたが、開店休業状態だ。