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2017年に公開された韓国映画「神と共に」。「冥界の謎を解き明かす、ファンタジー・アクション」(日本版公式ページより)とうたい、人口5200万人の韓国で1400万人を超える観客を動員したメガヒット作だ。翌年には続編(第二章)も制作され、日本でも先月から上映が始まった。

そんな「神と共に」が北朝鮮でも人気を集めているが、ご禁制の韓流映画を見た朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の下士官ら3人が摘発され、懲役刑に処せられたと、平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

摘発されたのは、黄海北道の沙里院(サリウォン)の通信小隊所属のパク中士(下士官)ら3人だ。

彼らは、部隊の外にある「家売台」という店を訪れた。家売台とは、自宅の一部を改造して食料品や生活必需品を販売する雑貨店のことだが、韓流ドラマ、映画、バラエティの販売、レンタルの媒介となっていて、ビデオボックスのように店内で見ることもできる。

(参考記事:北朝鮮で新手の商店「家売台」が大人気 「コンビニ」のように24時間営業

その家売台で先月から今月初めにかけて4回に渡り、「神と共に」第一章、オーストリアとドイツの合作映画「ダーク・バレー」(Das Finstere Tal)などを、USBメモリに保存して視聴した。そして、発覚を恐れてUSBを店において出た。

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USBを見つけた家売台の主人の息子は、友だちを呼んで夜な夜な「神と共に」を見ていたが、そこを保衛部(秘密警察)に踏み込まれてしまった。取り調べの過程で3人の名前が浮上し、逮捕に至った。3人は軍の総政治局出版検閲局79号室で取り調べを受け、パク中士には労働鍛錬刑(懲役)1年、他の兵士には6ヶ月の判決が下された。3人は刑期を終えると不名誉除隊となる見込みだ。

79号室とは、兵士の思想動向を取り締まる組織で、違法映像の視聴、ラジオの聴取などメディア関連の取り締まりを行っている。

それにしても、なぜ「神と共に」が人気なのか。それは北朝鮮の人々の占い好きと関係があるようだ。

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「映画が扱っている死後の世界に興味を持つ人が多い。密かに占いをするのが好きな北朝鮮の人々の特性が反映されたものだろう」(情報筋)

北朝鮮で占いは「迷信行為」とされ違法扱いだ。銃殺される占い師すらいる。それでも、庶民から党幹部に至るまで様々な階層の人々が占い師の元を訪ねる。そんな占い好きな国民性に、「神と共に」で描かれた死後の世界がぴったり合ったということなのだろう。

(参考記事:北朝鮮でまた公開処刑…女性2人を銃殺「占いしたから」

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また、朝鮮人民軍の兵士の間でも人気を集めているとのことだが、それにはこんな理由がある。

映画の主人公で、消防士で火災現場で亡くなったキム・ジャホンの弟、キム・スホンは兵役中の兵士として登場するが、「映画に南朝鮮の兵士の話が出るので、(北朝鮮の)兵士の間で流行している、南朝鮮の兵士の生活を間接的に覗き見ることができるので、興味を持つ」(情報筋)ということらしい。

また、軍隊生活に適応できず苦しみ事件に巻き込まれた兵士ウォン・ドンヨンを見て「南にも軍隊に適応できずに心の病を抱えた兵士がいるのか」との感想を抱くという。

軍当局は部隊所属の兵士全員を集め、事件の顛末を発表した。恐怖を与えるためだが、北朝鮮の人々の面白いコンテンツへの渇望は、懲役刑程度では抑えきれないだろう。

(参考記事:北朝鮮の少年少女が恐れる「少年院送り」…それでも止められない遊びとは