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インドのウッタル・プラデーシュ州では今年2月、密造酒を飲んで100人もの人が死亡する事故が起きた。その2週間後には、同じインドのアッサム州で156人が同様の事故で亡くなっている。

このように貧しい人々が酒飲みたさに密造酒を手を出し、命を落とす事故が、全世界的に後を絶たない。それは北朝鮮も例外ではない。

平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、3月初めに松岳(ソンアク)ブランドの焼酎を飲んだ人々が相次いで急激な視力低下に見舞われたり、死亡したりする事故が多発した。犠牲者の数には触れられていないが「町内全体がお通夜状態だった」(情報筋)とのことだから、複数の人が亡くなったものと思われる。

人民班長(町内会長)は、地域の飲食店を周り「松岳焼酎を飲むな」と警告した。同様の事件は平壌や新義州(シニジュ)でも発生しており、全国的な密造酒組織の存在が疑われる。当局も事の重大性を認識し、住民を対象にした政治講演会の場で「松岳焼酎には特に気をつけよ」と伝えている。

この松岳焼酎だが、軍事境界線にほど近い開城(ケソン)の松岳山にある開城松岳食料工場で製造されており、味が良いと評判でロシアや中国などの北朝鮮レストランでも販売されている。

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一般的にはアルコール度数25%、360ミリリットル入りが1本1万2000北朝鮮ウォン(約156円)で販売されているが、高級品など複数の種類が存在しする。国内の高級レストランや海外の北朝鮮レストランで販売されているものは、今回の事故の原因になったものとは異なると思われる。

情報筋は事故の原因について明らかにしていないが、失明という症状からすると、工業用アルコール(メタノール)が原因であることは想像に難くない。韓国に住む脱北者の間では「北朝鮮ではメタノールが入った偽酒が多く流通しており、今回の事件も松岳焼酎のパッケージを貼った偽酒によるものではないか」とうわさされている。

北朝鮮において偽装酒、偽酒は決して珍しいものではない。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は昨年11月、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋の話として、大都市の外貨商店では本物と偽物のウィスキーが販売されており、国営工場が外貨獲得のために偽物を製造していると伝えた。

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外貨商店で偽物の英国産ウィスキーを掴まされた情報筋が文句を言いに行ったところ、女性店員から「その値段で本物が買えると思っているのか」と反撃されショックを受けたと伝えた。店員は、需要が存在するから販売している、とうそぶいたそうだ。

このようにすぐにわかる粗悪品もあれば、本物と見分けがつかないものもあり、騙される人が少なくないとのことだ。

酒に限らず、北朝鮮にはありとあらゆる偽物が氾濫している。発展する市場経済に、法律や人々の意識がついていけずに偽物が市場に大量に出回るのは、急激に発展する国なら共通して経験する現象と言えよう。

(参考記事:北朝鮮製ニセモノ化粧品、高品質過ぎてバカ売れ