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北朝鮮は、建国前の1946年から農業の集団化を始め、1962年までに完了した。穀物生産の増大を目指したものだったが、働いても働かなくても得られる配給の量は同じであったため、農民のモチベーションが下がり、穀物生産も伸びなかった。

その非効率性に気づいた中国は1980年代初頭に、旧ソ連はそれから10年遅れて集団農場を解体していった。一方で集団農業に固執していた北朝鮮は、未曾有の食糧危機「苦難の行軍」を迎えた。

その後、同国の協同農場では、農民のモチベーションを上げるためインセンティブ制度である「圃田担当制」が施行されるようになった。国は土地の一部を農民に任せ、農民は収穫の一部を国に納め、残りを自分のものにできるというものだ。ところが、そのやり方をめぐってトラブルが耐えない。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、黄海南道(ファンヘナムド)載寧(チェリョン)の協同農場で起きている問題について伝えた。

現地の農民によると、載寧では今まで一部の協同農場で圃田担当制を実施してきたが、今年から拡大するに当たって新しい仕組みを導入することにした。

今までの圃田担当制は、農民に無料で土地を与え、収穫の7割を国に納め、残り3割は個人の取り分という方式をとっていた。

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それが今年からは「現地の実情に合った圃田担当制を導入し、効率を高める」(農民)との目的で、国に納める量は3割に減らし、個人の持ち分を7割に増やした上で、土地を有料で分け与えるシステムに変わる。

今回、農場が農民に土地を有料で「分け与えた」ものが、期限付き借地権なのか、耕作権、つまり小作権なのかは定かでない。北東部の羅先(ラソン)経済特区では、国が所有する住宅の居住権ではなく、所有権を居住者に売り渡すという北朝鮮では画期的な事業が始まったと伝えられているが、それとは異質のもののようだ。

「農場員たちは本当に自分たちが7割の穀物を持つようになれば、農作業に必要な肥料、資材の費用を差し引いても1年間の食糧は充分解決できると喜んでいる」(農民)

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ところが、当局の提示した土地の価格は1坪(3.3平米)あたり2000北朝鮮ウォン、または2元(約32円)。期限は1年だ。これを即金で買える農民は多くない。

「坪当たり2000北朝鮮ウォンで買えというのです。1坪に2000北朝鮮ウォン…農場が2000北朝鮮ウォンで売るんですよ。人民元なら2元なのに…農業は年に1度の機会しかないので、農場員たちはテレビやあれこれを売り払って農場の土地を買っています」(農民)

農民の中には、トンジュ(金主、新興富裕層)からカネを借りてまで土地を買っている人々もいるが、利子を含めて返済すると、既存の圃田担当制と分け前は変わらないという。「農場の幹部が現金を確保するために農民を欺いている」との声が上がっているとのことだが、それも当然だろう。

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北朝鮮の農村では、春にカネ、または穀物を借りて秋の収穫後に返済するヤミ金が横行し、返済に困って自ら命を絶つ人も少なくない。

(参考記事:穀物1キロで売られる娘たち…金正恩式「恐怖政治」の農村破壊

現地の別の情報筋によると、2012年から圃田担当制が実施され、当初はすべての農場が同じ仕組みだったが、昨年からは農場独自の仕組みで行えるようになった。国が計画した生産量を納めさえできれば、どのような仕組みを使おうと特に問題にはならないという。

郡は、2つの協同農場をモデルケースとして、農地を有料で分与し分配比率を変える方式と、既存の分配比率を導入し、どちらが農民の生産意欲と収穫量を向上させられるかを見ている。

圃田担当制は農場によって成功するところもあれば、失敗するところもある。より効果的な方法を手探りしている過程なのだろう。

ところが、土地を分け与える方式では、トンジュが農地を独占し、農民を雇って農作業をさせる形態が現れている。これでは北朝鮮が忌み嫌う、かつての大地主と小作農の関係が復活したも同然だ。

北朝鮮の海外向けプロパガンダサイト「わが民族同士」は、病気になった母親の治療費を地主から借りたが、それが返せなくなり地主に虐待されるという「むかし話」を紹介し、次のように締めくくっている。

「これはかつて、地主のやつらが高利貸しで農民の息の根を締め付けあげていたかを示す一つの実例に過ぎない。今日も資本主義社会の自民は高利貸しにより過酷な搾取に遭っている。高利貸しは人民大衆が国と社会の主人となった社会主義社会からは消え去った」