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年頭から始まった北朝鮮の恒例行事「堆肥戦闘」。不足する肥料を、人糞で作った堆肥で補おうというもので、遅くとも3月いっぱいで終了する。

地域や時期によって異なるが、国民は1人あたり1トンから3トンもの人糞を集めることを要求される。ノルマを達成するために他人が集めた人糞を盗む者もいれば、カネで人糞を売り買いする商売人もいる。また、書類だけの「カラ人糞」を取り扱う人糞ブローカーまで登場する有様だ。国から課せられた苦行を、カネ儲けのネタとして逆利用する北朝鮮商人のたくましさには舌を巻く。

(参考記事:冬の北朝鮮で暗躍する「人糞ブローカー」登場

ノルマが達成できなければどうなるのか。従来は総和(総括)の場で厳しく批判されたが、当局は最近になり、法的処罰をちらつかせてノルマ達成を強いていると、平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が伝えてきた。

国は、全国の各単位(機関、工場、企業所)に勤める労働者に対して、集めた人糞を使って1人あたり100キロから300キロの堆肥を生産するよう指示を下した。

この量がどれほどかは想像がつかないが、「ありえない量のノルマ」(情報筋)とあって、達成できたところはほとんどなかったようだ。

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それを受けて当局は、ノルマ未達成に対する法的処罰を行うことをついての指令を下した。課せられたノルマの半分も達成できなかった場合は、行政拘留処分にするというものだ。

実際、平城(ピョンソン)市の栢松里(ペクソンリ)、厚灘里(フタンリ)、三花洞(サマドン)、上次洞(サンチャドン)の農場管理委員長、鉄製日用工場、木製日用工場、給養管理所の支配人が10日の拘留処分を受け、現在も拘留中だ。

処罰の対象が「達成が半分未満」となっているのは、当局も堆肥生産が困難であることをある程度理解する姿勢を示したとも、そもそも半分程度の達成を引き出すためにあえて倍のノルマを課したとも解釈される。また、「100%達成でなければ処罰する」とした場合の反発を恐れたものとも言えよう。

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国民全体に重労働をさせ、社会全体を疲弊させる「堆肥戦闘」を北朝鮮が続けているのは、単に肥料不足を補うためだけではない。

(参考記事:亡命兵士の腸を寄生虫だらけにした北朝鮮「堆肥戦闘」という名の地獄

当局は、金正恩党委員長が年頭の「新年の辞」で発表した政策目標を貫徹するための雰囲気づくりのために、新年初めての社会的課題として「堆肥戦闘」を挙げている。国民全体を人糞集めに駆り出すことで、国民をコントロールするシステムの一つである「動員」を維持、強化しているのだ。

国営メディアも「堆肥戦闘」の雰囲気を盛り上げる。朝鮮労働党機関紙・労働新聞は「農作業準備戦闘で沸き立つ」(1月18日)、「今年の農作業の準備に大きな力を」(1月22日)、「堆肥の運送に力量集中」(2月11日)など、堆肥戦闘に関する記事を1面で報じている。

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記事はいずれも、数字をぼやかしたり、具体的な地名に触れなかったりで本当に達成できているのか読み手に疑問を抱かせる内容ばかりだ。経済制裁の影響で肥料ばかりか農薬の生産にも問題が生じ「特別な外部(海外)からの支援がない限りは、今年の農業も苦しいだろう」というのが情報筋の見立てだ。

(参考記事:ないないづくしで田植えを迎える北朝鮮の協同農場