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北朝鮮の金正恩党委員長と韓国の文在寅大統領による、今年3回目の首脳会談が18日に行われる。非核化を巡る米朝対話が停滞する中、今回の会談が突破口を開くことを期待する向きは少なくない。またそうなってこそ、北朝鮮側が待望する経済制裁の緩和、または韓国や中国などによる経済支援の実現も近づく。

しかし北朝鮮国民の中には、朗報を待ちくたびれた挙句、首脳会談にもはや何の関心も持てない人々が少なくないようだ。

両江道(リャンガンド)の内部情報筋は17日、デイリーNKとの電話取材に対し「最初の首脳会談のときは、すぐにでも南北交流が活性化されて経済的な大事変でも起きるかと思って歓迎したが、数カ月が経っても支援(物資)ひとつ手に入らず、もう特別な期待などしていない」と語った。

北朝鮮国民が国家に対して不信感を抱くのは、今に始まったことではない。

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しかし4月に行われた1回目の首脳会談の際、北朝鮮当局はその意義を大々的に宣伝した。これはもちろん、これまでもメディア戦略を自ら統括してきたと見られる金正恩氏が、直接指揮を取ったものであったはずだ。

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そうして大きな期待を持たされながら、それを地に落とされたショックはやはり大きかったようだ。

「南北首脳会談に続いて米朝首脳会談まで開かれたのに、何も起きていない。商売でも頑張った方がマシで、会談に気を使っても何もならないというのが住民の率直な心情だ」(前出の情報筋)

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋も「最初の首脳会談の後、南朝鮮からコメが入ってくるという噂が出回り、実際にコメ価格も若干下がったので、それを信じる人もいた。しかしその後、コメ価格が再び上昇し、南のコメは遂に現れず失望した」と語る。

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ただ、これらはいずれも中国との国境地帯に住む人々の声であり、首都・平壌の市民がどのように感じているかは今のところわからない。この情報筋も、率直にこう語っている。

「ここが平壌でもないのに、住民たちは国家が何をしようが関心を持てない。自力で生きてきた歳月がどれだけ長かったのに、今さら国家に何を期待するのか。自力で家族を養えば良いのだ」

一方、両江道の情報筋は、次のように付け加えた。

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「水害で被災者が発生し、農作物の作況も良くないので、韓国の支援を何となく期待する雰囲気はある」

これもまた、地方に暮らす人々の偽らざる心情だろう。北朝鮮の食糧事情はかつてと比べ改善しているが、地方にはまだ、その日の糧を得るのに売春に頼らざるを得ない女性らも大勢いるとされる。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

そういった人々にとって、自然災害や凶作は今なお大きな脅威だ。仮に今後、北朝鮮に食糧不足の兆候が表れるようなら、この点に限っては、国際社会の迅速な支援が行われるべきかもしれない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記