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かつて、全国の鉄道の8割を電化するほど電力に余裕があった北朝鮮。しかし、1980年代後半のソ連・東欧共産圏の崩壊で支援が減り、潤沢なエネルギー供給が得られなくなったことで電力が不足し始めた。さらに施設の老朽化に加え、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」で電力インフラが崩壊したことで、現在は慢性的な電力難の中にある。

「先軍政治」を掲げた金正日総書記は、電力インフラの整備に力を入れなかったため、数十年に渡って電力難が解消することはなかった。

一方で金正恩党委員長は8月、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の水力発電所である漁郎川(オランチョン)発電所の建設現場を視察に訪れるなど、電力分野に力を入れる姿勢をアピールしている。

中国からの援助で多少は緩和したと言われている北朝鮮の電力難だが、実情はどうなのだろうか。

(参考記事:北朝鮮の深刻な電力難、中国の支援で緩和か

デイリーNKは、首都・平壌郊外の平城(ピョンソン)の市民と中国で接触し、電力事情についてインタビューした。一般的に地方都市の電力事情はよくないが、交通、物流の拠点である平城はかなりマシな方だという。

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ー電力事情は、1〜2ヶ月前と比べてどうか?

「2015年には1日のうち、夜に2〜3時間電力が供給されていたが、徐々に時間が減って、2017年からは特別な祝日や国家的な特別報道があるときにしか電気が供給されなくなった」

(参考記事:北朝鮮、電気が通るのはニュース時間帯のみ

「(今年)6月からは電気の供給が再開されたが、個人の家にまでは来ない。毎年6月から10月までは電力事情がよくなるが、それは水力発電所がメインだからだ。11月中旬からは水が不足し、電気があまり生産できなくなり、冬にはひどい電力難となる」

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(韓国統計庁によると、北朝鮮の電力生産に占める水力発電の割合は、2016年で53.6%。火力は46.4%だ。資源エネルギー庁の統計によると、日本は火力が81.6%、水力は7.6%)

(参考記事:北朝鮮のトロリーバス運賃「200倍値上げ」の背景

ー市民は電力難をどう受け止めているのか?

「国が電力を供給してくれていた過去に未練はまったくない。役人は会議のたびに『電力問題を解決する』とか言ってその解決策を並べ立てるが、それを聞いた市民は裏で嘲笑していた。こんな有様だから、必要な電気は自分でカネを払って買ったほうがいいと言っている」

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ーカネを払えば電気が使えるのか?

「個人宅で(結婚式などで)電気が必要な場合は、市の配電部に頼んでカネを払って使う。数年前まではコネやタバコなどのワイロが必要だったが、今では1時間あたり5万北朝鮮ウォン(約650円)を払いさえすれば、希望する時間に電気を供給してもらえる。国の電気を使って(市の職員)個人がカネ儲けをしているわけだ。(供給される時間帯には)電線を共有する隣家でも電気が使えるようになるため、隣人たちはタダで電気が使えると喜ぶ」

ー幹部は電気をどのように使っているのか?

「工場や企業所の幹部、保衛員(秘密警察)、保安員(警察官)は、工場や企業所向けの電気を供給する電線を自宅まで引っ張ってきて(密かに)電気を使っている」

ーソーラーパネルを設置する家が増えたそうだが

「国が電気を供給しないので、個人宅ではテレビなどの文化生活を楽しむ家電を使うためにソーラーパネルを購入する。8〜9割の家庭でそうしている。ソーラーパネルの値段は大きさで異なるが、30ドル(約3400円)から80ドル(約9000円)だ」

(参考記事:北朝鮮の庶民の夢「ソーラーパネルを買って韓流ドラマを見たい」

ー電気料金が上がったとの話もある

「国定の電気料金が上がったとの話は聞いたことがない。国が電気を供給しないのに、料金を上げても意味がない。工場や企業所周辺にある家では1日に数時間電気を使えるが、工場の配電部に毎月50ドル(約5600円)の電気代を支払っている」

ー政府が電力積算計(メーター)を設置せよと指示したらしいが

「上からの指示があったのは確かだが、一般家庭には普及していない。電気を供給しないのに電力積算計を設置して何の意味があるのかと呆れている。当局は電力積算計の設置費用として1世帯40ドル(約4500円)を支払えと言ってきたが、電気が来る保証がないので立ち消えになった。電気を1日に数時間でも供給してくれるのなら、カネを払ってでも(電力積算計)を設置するが、今のところは設置しようという人は少ない」

従来、電気料金は一律だったが、平壌や咸興(ハムン)などでは使った電気の量に応じて料金を払うシステムに変更するため、電力積算計の設置が進められている。しかし、料金が大幅に値上げとなるため、市民の抵抗に遭っている。

(参考記事:電気料金「2900倍値上げ」に静かに抵抗する北朝鮮庶民