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北朝鮮は、離婚の難しい国だ。当局が離婚を「革命の敵」「子どもの未来を食いつぶすエゴイズム」と規定し、社会悪とみなしているためだ。

北朝鮮では1956年3月に協議離婚が廃止され、裁判離婚のみが認められることになった。また、「離婚が社会と革命を利する場合のみ容認する」とし、許可事由を性病などの健康問題、不倫、家庭内暴力、重大な違法行為などに限っている。さらに、2回目の離婚からは、地裁ではなく高裁(道裁判所)で審理が行われる。

そんな北朝鮮でも近年、離婚が急増しているのだが、法の不備が深刻な問題を引き起こしていると、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。

平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、商売で生計を成り立たせる市場経済が一般化した影響で、離婚による家庭崩壊が社会問題になっており、30代の若い層での離婚率が急増し、子どもが捨てられることもあると伝えた。

情報筋はある事例を挙げた。場所は平壌市郊外の平城(ピョンソン)。全国有数の卸売市場がある、北朝鮮の物流の中心地だ。

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そこで商売をしていたトンジュ(金主、新興富裕層)の30代女性は、夫から浮気を疑われ暴力を振るわれた。

翌日、女性は裁判所に向かい、離婚請求を行ったが、判事に却下されてしまった。その理由は「暴力は離婚の理由として認められない」というとんでもないものだ。反発した女性は「法なんか頼りにならない」と言い放ち、3歳の息子を置き去りにして家から出ていってしまったという。

「市場経済が発達した都市の女性は、商売で一家の生計を支えてきたが、家父長的な文化はそのままだ。それに耐えきれなくなって離婚や家出をしてしまう」(情報筋)

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夫婦が離婚した場合、子どもの養育権は元妻が持つのが一般的だが、元夫が養育費を支払おうとしない場合、子どもを元夫のところに送り出す。経済力のない元夫は結局、子どもを捨ててしまうというのだ。

「養育費の支払いを義務化した法は形骸化していて、裁判所の命令もただの紙屑に過ぎない。そのせいで子どもたちが犠牲になっている」(情報筋)

平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋も、市場経済の発達で、商売ができない男性の地位は下がり、女性の地位が上がったため、夫婦喧嘩が絶えず離婚が急増していると指摘する。

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「男性は、配給ももらえない国営工場に縛り付けられているので、カネも稼げない『ゴクツブシ』扱いされるようになってしまった」(情報筋)

男性は学校卒業後や兵役を終えた後に、国営企業や国の機関に配属されるが、まともな給料も配給ももらえない。一方、必ずしも就職する必要のない女性は、市場での商売に励み経済力をつけている。おかげで女性の地位は向上しているが、男尊女卑的な旧来からの文化も根強く、そのギャップが様々な問題を引き起こしている。

(参考記事:妻に優しくなった北朝鮮の夫たち…亭主関白の末路は「餓死の恐怖」

「北朝鮮では、性に対する考え方が開放的になり、男性も女性も憂さ晴らしで不倫をすることが多い。市場経済化の副作用が、離婚率の拡大として表れている」というのが、この情報筋の見方だ。

(参考記事:北朝鮮の首都「薬物中毒・性びん乱」で汚染の危機

捨てられる子どもが増えるのには、こういう事情もある。

北朝鮮には保育院、愛育院、中等学院などと呼ばれる孤児院が数多く存在するが、中朝国境に近い地域では、児童が失踪する事件が相次いでいる。

デイリーNKの内部情報筋は、「中国や韓国にいる脱北者が自分の子どもを脱北させているらしい」と伝えた。つまり、脱北時に連れ出せなかった子どもが孤児になって施設に収容され、親たちがそれを取り戻しに来ているということだ。

(参考記事:北朝鮮で「捨て子」が深刻化…背景に「避妊・中絶」禁止