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北朝鮮当局が昨年末、国内の電話帳を海外に売り払おうとしたとの疑いで平壌市民6人を銃殺していたことがわかった。また、当局はこの情報を司法機関の内部で共有しながら、情報流出防止に万全を期すよう号令をかけているもようだ。

北朝鮮国内にいるデイリーNKの高位情報筋は20日、「(当局が)司法機関を対象に発行した講演資料に、昨年末、電話帳を外国に持ち出そうとした平壌の住民6人を銃殺したとの事実が書かれている。違法行為を犯せば、必ずバレるということを強調する内容だ」と伝えてきた。

韓国や米国との対話路線に舵を切り、核実験の停止も宣言した金正恩党委員長だが、国内では相変わらず恐怖政治を続けているのである。

(参考記事:謎に包まれた北朝鮮「公開処刑」の実態…元執行人が証言「死刑囚は鬼の形相で息絶えた」

情報筋によれば、講演資料では電話帳に5万中国元(約85万円)の値が付けられていたことが明かされているという。

なぜ、電話帳にそれほどの高値が付けられ、さらには外国に売り払おうとした人が処刑されるほどの大ごとになるかというと、北朝鮮においては電話帳が「国家機密」として扱われているためだ。

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北朝鮮には電話帳が1種類しかなく、そこには様々な国家機関の番号が記載されている。例えば、韓国の中央日報が2004年に入手した電話帳には「人民武力部対外事業局:321−4987、労働新聞南朝鮮部:322ー2728」という具合に、公に存在を公表していない部署や、組織の全体像までわかってしまうのだ。

そのため、電話帳を韓国の情報機関などに売ってひと儲けしようと考える人が後を絶たないようで、昨年には国家保衛省が電話帳の回収を行っている。

(参考記事:国家機密が満載の北朝鮮の電話帳。当局が回収作業進める

また、前出の情報筋は「電話帳を売り払おうとした犯人が平壌の住民だったことも、当局が厳罰を下した理由のひとつではないか」と言っている。

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「平壌には、党・軍・政府の指導機関の幹部たちが集まっている。彼らが情報の漏洩元となった場合、国家が受けるダメージはより大きくなる。そのため『みせしめ』として銃殺し、規律がゆるむのを未然に防ごうとしたのだろう」(情報筋)

しかし北朝鮮の恐怖政治は、昨日きょう始められたものではなく、建国以来ずっと続けられてきたのだ。

(参考記事:【動画】金正恩氏、スッポン工場で「処刑前」の現地指導】

それにもかかわらず、国家に背いて情報を売り払おうとする人が続出するのだから、北朝鮮の体制は、そろそろ国民に対するグリップを失いかけているのかもしれない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記