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脱北者きってのエリートが、テレビに出演して韓国の脱北者差別について語った。

チュ・スンヒョン氏は、朝鮮人民軍(北朝鮮軍)で韓国向けの拡声器放送の要員として勤務していた2002年2月、AK-47小銃2挺を持ったまま軍事境界線を越えて韓国に亡命した。その後、名門の延世大学の政治外交学科の大学院に進学。博士学位を取得し、韓国国会や、ロッテグループなどの企業での勤務を経て、現在は全州紀全大学の教授を務める。

そんな彼が、韓国の公共放送KBSに出演し、脱北者として体験した差別について切々と語った。

アルバイトをしようとガソリンスタンドを訪ねた彼は、面接で北朝鮮から来たと明かした。すると、採用を断られてしまった。卒業後は100社以上に願書を出したが、すべて不合格となった。ところが、履歴書から脱北者であることを消したところ、すぐに合格通知書が来たというのだ。

「経済的な優遇や(特別な)待遇を望んでいるわけではありません。私は競争社会で働ける能力を持っていると思っているのに、参加を妨げるのはひどい差別だと思います」(チュさん)

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彼は、韓国に暮らす脱北者を苦しめる「もうひとつの偏見」についても語っている。

「『すべての脱北者は極右だ』と言う人もいれば、反対の陣営からは『分断の下手人』呼ばわりされます」(チュさん)

脱北者は、韓国のリベラル層から「極右」「朴槿恵支持者」のをレッテルを貼られることが多い。極右団体が、経済的に困窮した脱北者を動員して、セウォル号沈没事故の遺族の集会などを攻撃させていたことや、保守派の多いキリスト教(プロテスタント)の信者が多いことから、そんな目で見られてしまうのだ。

(参考記事:「朴槿恵を守れ!」辞任要求に対抗する韓国民間団体の素性

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実際のところ脱北者は、住んでいる地域の政治傾向に影響を受けるため、極右が多数ではないことが2016年に行われた調査の結果で明らかになっている。

それでも、偏見は根強い。脱北者団体は、中国から北朝鮮に強制送還される脱北者の救援を含めた北朝鮮の人権問題に関する世論を喚起する運動を行っているが、偏見が足を引っ張っている側面がある。

差別から逃れるために、多くの脱北者が韓国国籍であることを隠してカナダや英国に難民申請し、一度は受け入れられながら、その後の再審査で虚偽が判明して追放される事例が多発している。

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韓国国会の改憲特別委員会が今年1月に示した改憲草案には、難民の保護と、政治的に迫害を受ける者の亡命権を明記されていた。一部では脱北者に対する保護の充実を期待する声が上がったが、文在寅大統領が26日に発議した改憲案から同項は抜け落ちてしまった。

一方で、性別、宗教、障碍の有無、年齢、人種、地域、社会的身分に基づくあらゆる差別を禁じ、国にはその是正を義務付けている。新たな憲法が、人権重視の理想と、差別に苦しむ脱北者の現実との乖離を埋めることを期待したい。