北朝鮮の北部国境地域で、アダルトビデオを視聴していた人が相次いで摘発されている。当局は取り締まりに乗り出しているが、効果はあまりないようだ。韓国の北朝鮮専門ニュースサイト、ニューフォーカスが報じている。

両江道(リャンガンド)の情報筋によると、今月中旬、恵山(ヘサン)市の恵明洞(ヘミョンドン)の民家で、青年5人が12ボルト用のノートテル(携帯用メディアプレイヤー)にメモリーカードをさして、アダルトビデオを視聴していた。

この情報を、韓流ドラマなど海外から流入した「不法映像物」を取り締まるタスクフォース「109常務」がキャッチ。保安署(警察署)の監察課と合同で現場に踏み込み、5人を逮捕した。その後の取り調べで、5人全員が幹部の息子であることが判明した。

逮捕されて間もないため、5人に対してどのような処罰が下されるかは不明だが、通常ならば政治犯収容所に送られるかもしれない重罪だ。

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北朝鮮の刑法は183条で「退廃的、色情的、醜雑な内容を反映した絵、写真、図書、録画物、電子媒体などを許可なく他国より輸入、制作、流布、保管した者は1年以下の労働鍛錬刑(懲役)に処する」と定めている。また、184条では視聴も禁じている。制作、販売で銃殺された事例もある。

3月には、恵山から15キロ北東にある普天(ポチョン)郡の新興里(シヌンリ)でも、アダルトビデオを見ていた人が逮捕されるなど、同様の事件が相次いでおり、当局はノートテル所有者に対する取り締まりを強化している。

北朝鮮では最近、幹部の子どもたちが通う高校で、多数の生徒が覚せい剤を使用した上で「不純異性交遊」を行っていたとする大スキャンダルが発覚したばかりだ。少年少女の覚せい剤の乱用は親の世代から影響を受けてのものだが、大人たちが見ているアダルトビデオもまた、子どもたちに影響を与えているのかもしれない。

もしそうなら、金正恩党委員長としてもこの現状にはそわそわせざるを得ないだろう。

ちなみに、取り締まりで没収されたノートテルとUSBメモリは、取締官にワイロを払えば返してもらえる。また、取締官が没収品を売り払うこともある。つまり、彼らが韓流やAVの伝道師となっているのだ。

情報筋によると、市場経済の拡大による現金収入の増加で、韓流ドラマなどの違法映像物の視聴が、農村地域にまで広がっている。

この地区の農家は、自宅の庭や裏山を耕し、個人耕作地にして、様々な作物を栽培している。秋に収穫した穀物は保存しておき、値上がりする春を待って市場で売る。手にしたカネで、ノートテルやソーラーパネルと共に、韓流ドラマが保存されたUSBメモリを購入し、自宅で楽しんでいるのだ。恵山からわざわざ売りに来る業者もいるという。

韓流ドラマが保存されたUSBメモリは2ギガが30元(約470円)、5ギガが100元(約1580円)で売られている。これらのUSBは中国製がほとんどだ。韓国製品の販売、所有が禁じられているため、韓国製のUSBメモリの所有が見つかれば、罪が重くなり、ワイロを払っても見逃してもらえなくなるからだ。

高英起(コウ・ヨンギ)

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1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記