金正恩氏は「写真の趣味」が命取りになるかもしれない

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朝鮮労働党機関紙の労働新聞と、朝鮮中央通信は22日、金正恩党委員長が「核弾頭爆発実験の成功」に寄与したとされる関係者らと記念撮影を行ったとして、その写真を公開した(下の写真)。

自分の「ヘンな写真」も

見ての通り、あまりに人数が多く、このサイズの写真で一人ひとりの顔を判別することは難しいが、ここに写っている人々は間違いなく「金正恩時代のスーパーエリート」たちだ。

先軍政治が掲げられたかつての金正日時代、肩で風を切っていた軍人たちの権威は、正恩氏の時代になってすっかり削がれた。野戦軍人として最高位に上り詰めた将軍が見世物のように処刑されたり、追放されたりしている。

軍人に替わって最高指導者の寵愛を受けているのが、核兵器開発や弾道ミサイル開発に携わるエリートたちである。度重なる失敗もとがめられることなく、正恩氏の叱咤激励を受けながら核武装の実現のためにまい進してきた。

金正恩氏と「核弾頭爆発実験」功労者たちとの記念写真(2016年9月22日付労働新聞)
金正恩氏と「核弾頭爆発実験」功労者たちとの記念写真(2016年9月22日付労働新聞)

配給などの待遇の厚さも、相当なものだろう。それも含め、正恩氏は体制の生き残りをかけて、この分野に集中投資してきたわけだ。

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言い方を変えるなら、この写真に納まっている人々こそが、正恩氏の力の源泉だと言うこともできる。だから彼らがいなくなったら、正恩氏の野心は潰え去るだろう。

ということはつまり、米韓にとっては最も「除去」したい人々だということもできる。北朝鮮のメディアは写真撮影の日時を明かしていないが、それが事前に漏れたら、どうなるか。今後いっそう情勢が険悪化することになれば、米韓の軍部内では「チャンスだ、やってしまえ」との声も上がるだろう。

正恩氏は核兵器開発だけでなく、ミサイル開発などに携わる関係者との記念写真も公開している。時には自分のヘンな写真まで公開し、我々を楽しませてくれる正恩氏ではあるが、いずれこうした記念撮影も、自由にできなくなる日が訪れるかもしれない。

高英起(コウ・ヨンギ)

1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記