北朝鮮における処刑は、刑場でのみ行われるわけではない。1998年には、当局の横暴に抗議した製鉄所の労働者数百人が、戦車で次々に轢き殺された事件があった。これを主導した軍の弾圧部隊の指揮官は、まさか独断で労働者を殺したわけではあるまい。北朝鮮では、すべての国民の生命は国家に従属している。軍の高官といえども、それを勝手に殺すことは許されない。ということは、弾圧部隊の指揮官は軍上層部から「殺りく」の許可を与えられたのだ。では、軍上層部には誰が、どのような形でその権限を与えたのか。

北朝鮮の人権侵害を追及するということは、こうした謎を解明していくことでもある。

高英起(コウ・ヨンギ)

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1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記