二人の朝鮮人民軍兵士(本文とは関係ありません)
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「大尉、同性愛は私という一人の人間の自我の確認です。それが貴国とあなたにいかなる損失も与えない以上、私とジョナサンのプライバシーなのに、それを妨げるなんて酷いです」

「ここは人間らしい暮らしだけが享有される共和国の領土だ。この地においてそのような行為は絶対に認められない」

これは北朝鮮の作家チョン・イングァンの小説「平壌の吹雪」の一節だ。アメリカの情報収集艦プエブロ号が北朝鮮に拿捕された、1968年の「プエブロ号事件」を題材にしたこの小説。そこで描かれるアメリカ人は、資本主義により人間性を破壊しつくされた不潔で残忍、金に汚い上に堕落した存在として描かれる。

【参考記事】プエブロ号事件とは?

その「資本主義の堕落」の象徴の代表例として挙げられているのが「同性愛」である。22日に伝えた北朝鮮のゲイに関する記事の反響が大きかったことからデイリーNKジャパンでは「北朝鮮の同性愛事情」について数少ない情報から探ってみる。

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【参考記事】前線で火を噴く「愛の砲火!!」 北朝鮮のゲイ軍人画像に世界が注目

かつて共産主義国家では「同性愛は違法」だった

1993年までアメリカ軍では同性愛者の勤務が禁じられていた。(同性愛者であることを公言することも2011年まで禁止)

プエブロ号の船員、ランガムバーグは同僚船員のキンノックとジョナサンが深い仲になっていることに気づき、船長に密告する。しかし、船員のうち十数人が同性愛者であることを知っている船長は、船の運営に支障をきたすことを恐れ、密告を握りつぶす。

プエブロ号内のベッド
プエブロ号内のベッド
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船が拿捕された後、しばらくはおとなしくしていたキンノックとジョナサンは、部屋の配置換えをきっかけにまたよりを戻す。それを知った朝鮮人民軍所属の主人公「私」は、キンノックを問い詰める。二人の関係を認めて欲しいと哀願する彼。それに対する「私」の答えは「同性愛は非人間的行為」というものだった。

ゲイカップルのささやかな願いを、ひどい言葉で踏みにじる朝鮮人民軍の軍人。非人間的なのはどちらなのだろうかと問い詰めたくなる。ホモフォビックな悪役そのものだが、小説で彼はあくまでも英雄だ。

かつてのソ連やキューバなど共産主義国家で同性愛は違法であり、発覚すると精神病院や刑務所送りになっていた。では、北朝鮮でも同性愛は違法なのだろうか。答えはNOだ。北朝鮮の刑法には同性愛を禁止する条項はおろか言及すらされていない。

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それではなぜ小説の中のゲイカップルはあのようなひどい扱いを受けたのだろうか。
(つづく)

【連載】北朝鮮の同性愛事情


【1】小説に描かれた「ゲイは非人間的」


【2】北朝鮮のゲイは「理解も迫害もされない」


【3】北朝鮮でゲイが発覚すればどうなる?処遇はお上のさじ加減次第


【4】「ゲイは変態性欲」西洋の精神医学が変えた「朝鮮の性」の観念


【5】キリスト教「ゲイはエイズをまき散らす」同性愛者「キリスト教はヘイトをまき散らすな」韓国で深まる対立


【6】「平壌を再び朝鮮のエルサレムに」同性愛とキリスト教と北朝鮮