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今年の春、ベトナムのある日本語学校では、日本への留学をめざす学生らに一枚の紙を配りました。注意書ともいえるそのなかには、万一日本の入管当局から直接本人の携帯に電話が入ることがあるかもしれないが、そうした時にどぎまぎしないようにとの要点が書かれていました。

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ベトナム第3の都市、ダナンの日本語学校

質問されるといっても、まだ日本語を勉強中の彼らにとって答えられることはもとより限られているのだから、その範囲内で答えれば何ら問題はあるまいと思いがちですが、それだけではありません。日本に留学するための最低条件として日本語検定N5(旧4級程度)の資格取得が渡航費用の負担などとあわせて必要なのですが、学生のなかには偽造した合格証を添付することが珍しくないのです。これを見抜くために、当局側も時に現地の人間を使ったりして抜き打ちの質問をしてくるというわけです。

同様に留学希望者の親が日本に送れるだけの渡航費や授業料を負担できるか否かをチェックするために、200万円程度の預金残高証明書も添付が義務づけられています。しかし、これも偽造が後を絶たないため、最近は当局側も納税証明書に切り換えさせるなどの対策を講じてきています。

もちろん多くの日本語学校はルールに則ってやっていますが、留学希望者の不足に悩む一部の学校のなかには前記のような方法で入国させるケースがあるのも事実です。

ねらわれる私費留学生

こうした“いたちごっこ”ともいえる偽造とチェックは以前にもありました。中国、それも福建省出身者の日本への留学希望が多かった頃です。当局は直接本人の携帯に電話して事実関係の確認や、時に方言のチェックを入れたりしてきたのです。

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冒頭の日本語学校の注意書の配布は、いわばこれへの「傾向と対策」といえます。背景には、留学希望者をベトナムや日本の日本語学校に紹介して法外な紹介料を稼ぐブローカーの存在があります。

ベトナムから来日して日本語学校に入学するには、大別してふたつの方法があります。ひとつは「支弁留学生」といわれるもので、あらかじめ受入れ企業が認めてその企業でアルバイトをしながら学校に通う学生です。この場合、受入れる企業側の面接やテストといったチェックがあるため総じて語学力も高く、ブローカーの介在する余地はあまりありません。新聞配達の奨学生も多くはこれにあたります。

もうひとつは渡航費用から授業料まで自分の家に負担してもらって、来日してからアルバイトを探して稼ごうという「私費留学生」です。大多数はこれに該当し、ブローカーがターゲットにするのも多くはこの層です。

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ベトナムからの留学生は、来日して日本語学校に入学するのに直接的な費用だけで約100万円近くかかります。ベトナムの親の収入は、せいぜい月額1.5万?2万円ほどです。この中から100万円以上の大金を用意しようというのも、子供に日本で勉強のチャンスを与えたいという気持ちもさることながら「日本に行けば簡単に、毎月13?15万円はアルバイトで稼げるから借金しても大丈夫。それどころか、半年もしたら毎月、親の数ヶ月分の仕送りが期待できる」という甘言にのせられた、という側面も少なくないのです。

私たちは留学生というと海外で学びながら見聞を広めるといった印象を持ちがちです。もちろん間違いではありませんが、新興国の場合は収入を得るための手段としての留学もあるといっても過言ではありません。就労ビザなどに比べ、条件さえ満たせば、比較的容易にとれるのが留学ビザだからです。(つづく)

?(取材・文・写真)
坂内 正(ばんない ただし)

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ファイナンシャルプランナー、総合旅行業務取扱管理者。政府系金融機関で中小企業金融を担当。退職後、旅行会社の経営に携わり、400回以上の渡航経験を持つ。ロングステイ詐欺疑惑など、主にシニアのリタイアメントライフをめぐる数々のレポートを著す。著書に『年金&ロングステイ 海外生活 海外年金生活は可能か?』(世界書院)。ミンダナオ国際大学客員教授。『情報と調査』編集委員

※この連載は『情報と調査』2014年6月30日号掲載の記事を再構成したものです。