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北朝鮮が韓国と米国に約束した非核化をめぐり、国内の意見が真っ二つに割れている。とはいっても、非核化そのものの是非ではない。非核化後の国のあり方だ。(丹東:カン・ナレ記者)

中国に派遣された北朝鮮の幹部は、中央の高官、外貨稼ぎ機関の関係者、トンジュ(金主、新興富裕層)の間から「現状を維持し国際社会から原油支援さえ引き出せばいい」という声がよく聞かれると伝えた。

「朝鮮労働党本部庁舎の幹部たちは一様に、非核化に大きく反発している。しかしそれは表向きのものだ。本音では、非核化に合意して国際社会がすぐに経済制裁を解くことに不安を抱いているのだ」(幹部)

北朝鮮にとって、経済制裁の解除は望ましいことと思われるが、なぜ不安に感じるのだろうか。それは、経済制裁が解除され莫大な資金が流れ込んでくると、経済的に余裕のできた金正恩党委員長が、北朝鮮をかつてのような計画経済の時代に戻すのではないかと考えているからだ。

「金正恩が望むのは、改革開放ではなく権力の信頼性が最も高かった1980年代への回帰だ」と、この幹部は話す。そして、配給を無条件で復活させよとの最近の指示は、食べ物で国民を統制していた1980年代の考え方だと説明を加えた。

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そうなれば困るのは幹部やトンジュたちだ。

「1980年代の閉鎖的な政策を導入するとなれば、幹部はワイロが得られなくなり、厳しい思想教育と規律に縛られた暮らしに戻る。外貨稼ぎ機関は縮小され、海外への出張、駐在も半分以下になるだろう」(情報筋)

一方、非核化を心待ちにしているのは、長年ひもじい暮らしを強いられ続けてきた庶民だ。

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平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は「非核化にはそのものには関心がないが、対北朝鮮制裁が解除され、国際社会からの支援が行われるのを楽しみにしている階層は、人口の約4割を占める貧困層だ」と説明した。

幹部やトンジュにとって地獄だった1980年代だが、貧困層にとっては「古き良き時代」で、配給に期待する人々の心理は根強く残っている。

「彼らにとって、学習と規律の生活に縛られた1980年代は、むしろ楽園だった。規律生活だけうまくやれば国から配給がもらえた。今のように食べ物がなくて餓死の瀬戸際に立たされるような状況から脱することができる」(情報筋)

(参考記事:「6月に韓国から食糧配給が!」街の噂が金正恩氏を苦しめる

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つまり、非核化をめぐり階層ごとに大きな展望の差があるということだ。金持ちは過去への回帰を恐れ、貧しい人々は過去への回帰を望んでいるというのである。

北朝鮮は、一部の嗜好品を除き、何でもかんでも配給される世界でも類を見ない配給依存国家だったが、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」を前後して、配給がストップしてしまった。生きるすべを持たない人々は次々に餓死し、商才のある人々は市場での商売で延命した。そして、後者の中からトンジュが現れたわけだが、彼らにとって商売が禁止され、皆が平等に貧しかった時代への回帰は、悪夢そのものだ。

金正恩氏は最近、「改革開放の幻想に浸っている人々がまだいるが、われわれは改革開放ではなく自強力第一主義で社会主義強国を建設する」との指示を下したとされる。一部の人々は、それを過去への回帰の前兆と見ているというわけだ。

かつて北朝鮮に莫大な援助をしていたソ連や東欧の旧共産圏はもはや存在せず、世界は30年前と様変わりした。また北朝鮮の人々は、何も知らされずに生きていた1980年代とは異なり、外の世界には豊かできらびやかな外の世界が存在することを知っている。

それでもなお、配給と引き換えに、大多数の国民が過去への回帰を望んでいるのだろうか。