朝鮮人民軍(北朝鮮軍)が12月1日午前0時、全軍に緊急招集を発令したと米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が伝えている。この時期の緊急招集は、冬季訓練に入るためのもので例年通りの動きだが、一部に異変も見られる。

軍事境界線上の板門店で兵士の亡命事件が発生するなど、北朝鮮軍の規律はゆるみ切っており、締め付けを強める動きがうかがえる。

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北朝鮮は例年、11月から12月にかけて中隊(約150人)規模の冬季訓練を開始する。1月に入ると、これが数百人から1,000人前後の大隊規模に拡大し、2月に近づくと10,000人余りの師団規模となる。そして、3月には30,000~50,000人の軍団規模にまで拡大し、陸・海・空軍と特殊部隊による合同演習を実施。ここで有事に対する即応力が最大になり、この態勢が秋まで維持されるのだ。

こうした北朝鮮側の動きに対応し、米韓連合軍も春に「フォールイーグル」と「キーリゾルブ」、秋口に「乙支(ウルチ)フリーダム・ガーディアン」といった合同軍事演習を実施している。

両江道(リャンガンド)の消息筋がRFAに伝えたところでは、「今年は12月1日から冬季訓練が開始されるので、近いうちに緊急招集があることを予想していたのだが、午前0時に緊急招集が発令されるとは思わなかった。通常は午前4時頃に発令される」という。

招集発令が抜き打ち的に早められたのは、兵士たちに緊張感を与えるためかもしれない。また、冬季訓練には準軍事組織の労農赤衛軍なども参加するため、民間人にも緊張感は伝播する。

さらに咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によれば、「今年の冬季訓練は、12月10日まではまず政治思想学習が行われる。これが終わり、11日頃から本格的な訓練に入る」という。

ここでも、例年と異なる部分が見られる。「昨年までは、政治思想学習は7日までに終わっていた。今年は3日間、延長された形だ」(前出の消息筋)。

これは明らかに、軍紀の引き締めを狙った動きだ。

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核ミサイル開発やサイバー攻撃能力の強化、特殊部隊の強化にばかり注力してきた金正恩党委員長も、さすが一般兵力の弱体化が気になって来たのかもしれない。

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高英起(コウ・ヨンギ)

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1966年、大阪生まれの在日コリアン2世。北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。北朝鮮問題を中心にフリージャーナリストとして週刊誌などで取材活動を続けながら、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に 『脱北者が明かす北朝鮮』 『北朝鮮ポップスの世界』 (共著) 、 『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』 『コチェビよ、脱北の河を渡れ ―中朝国境滞在記―』 など。

脱北者が明かす北朝鮮 (別冊宝島 2516) 北朝鮮ポップスの世界 金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔 (宝島社新書) コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記